住宅ローンを滞納すると、競売手続きの申し立てをされてしまいます。
裁判官はそれを受けて、競売手続きを開始。
同時に、自宅は裁判所に差し押さえられます。
債務者(ローン滞納者)には、裁判所から競売開始決定と一緒に、差押え登記の通知が届くはずです。
テレビやニュースなどでも、「差し押さえ」という言葉はよく使われますが、自宅を差押えられるとどうなるのかご存知ですか。
自宅(不動産)が差し押さえられると、不動産登記簿には「差押」と記載されます。
この記載をすることを差押え登記といいます。
では、住宅ローンの滞納により自宅を差押えられてしまった場合、どうすることもできないのでしょうか。
差押えとその対処について、詳しく説明していきます。
1. 競売手続きで差し押えされるとどうなるのか〜所有者さえも手出しができなくなる
債権者が競売を申し立てると、受理した裁判所は差押え手続きをします。
差押えが完了したら、債務者に対して「不動産競売開始決定」の通知を送ります。
お手元にこの通知が届いた場合、すでに不動産登記簿には「差押」という文字が記載されています。
なお、差押えされているかどうかは、ご自宅の登記簿謄本を取得すればわかります。
そして、差押されてしまうと、自分の家であっても、勝手に売ることや譲り渡すことができなくなるのです。
「知り合いや親族が自宅を購入してくれる!」なんてことがあったとしても、差押えがされている場合には勝手に売ることはできません。
逆に、購入する方としては、不動産を購入する際には登記簿謄本を取得して「差押」の記載があるかどうかをチェックしておく必要があります。
1-1 差押えができる人や効果とは?
差押えができる人は、権利がある者だけに限られます。
例えば、住宅ローンを組んでいる銀行などです。
住宅ローン契約をする際に、債権者である銀行は貸したお金を担保するために抵当権を設定します。
この「抵当権」に基づいて差し押さえができるのです。
抵当権が設定されているかどうかは、法務局で不動産登記簿を取得すれば確認ができます。
実際には、債権者は、「この債務者はもう返済できないだろう」と判断すると、裁判所に競売手続きを申し立てます。
裁判所にその不動産を売却してもらい、その売却代金をローンの残債にあてたいと考えて行うのが競売手続きです。
この申立を受けて、裁判所は差押えの手続きを実行します。
競売物件が他の誰かに勝手に売却されたり譲り渡されないようにするためです。
なお、場合よっては、目的の物件には、他にも別の債権者が抵当権を設定していることもあります。
この場合、別の抵当権を設定している債権者も、自分の債権(貸しているお金)を回収するために、担保した同不動産を売却したいと考えます。
しかし、抵当権を設定している債権者であろうと、すでに差押えされた物件を勝手に売ったりすることはできません。
裁判所が差押え、すでに競売手続きが開始しているためです。
別の債権者は、競売で回収できた代金から公平に分配してもらうことになります。
1-2 自宅の購入者が決まれば差押え登記は抹消される
購入者が決まれば差押登記は解除されます。
競売の場合、買受申出人の中から落札者が決まって手続きに入ると、裁判所は差押登記を解除して手続きを進めていくことになります。
落札者によって代金が支払われると、所有権移転の手続きがおこなわれます。
所有権が移転されれば、もう他人の家となります。
まだ家に住んでいる場合には、不法占拠している状態です。
すぐに引っ越しをして、明け渡しをしなくてはいけないことになります。
2. 差押えされた際の対処法〜任意売却に切り替える
競売手続きを申し立てられ、差押えされてしまった場合、
「このまま競売されるのを見届けるしかないのか」と思われるかもしれません。
確かに、競売を阻止する方法は限られています。
残りのローンを一括弁済する以外に方法はないでしょう。
しかし、一括弁済など、そんなことは不可能な状況だと思います。
また、差押えに関しても、取り消すことができるのは競売の申立てをした債権者に限られますので、一括弁済以外に方法はありません。
一括弁済ができない状況だと、売却して手放すしかないでしょう。
ですが、競売以外の方法で対処することは可能です。
任意売却です!
抵当権が付いている家を売る方法は競売だけではありません。
任意売却という方法があるのです。
抵当権が付いているローンが残っている家を普通の不動産屋で売却することはできません。
競売も任意売却も「家を売る」ということには変わりありませんが、任意売却で売った方が債務を減らすことができます。
ただ、問題なのは、任意売却にするには、申立をした債権者の同意を得ることが前提となります。
債権者の同意を得るのは簡単なことではありませんが、条件次第では同意してくれます。
競売よりも高く売れる可能性や早く売れる可能性がある物件の場合には、債権者も応じてくれるはずです。
なお、一般的には競売よりも任意売却の方が高い価格で売れます。
その点が明確であれば、比較的に債権者も協力的です。
特に、オーバーローンの場合には、債務者にとっても任意売却で高く売れた方がメリットになります。
少しでも高く売れれば、それだけ残りの債務を減らすことができるからです。
ただ、競売手続きが進んでいる状況で任意売却へ切り替えて売ることは、時間的にもギリギリです。
債権者との交渉も含めると、素人がやるのは難しいでしょう。
任意売却の専門業者と連携している弁護士に相談して、対処してもらうべきです。