相続税の負担が大きくなる方に関しては、何もせずに相続してしまうと大きな損をします。
何かしらの節税対策が必要です。
不動産の購入や生命保険の利用、養子縁組による節税など、節税対策は色々とあります。
その中でも一番簡単な節税対策となるのが「贈与」です。
しかし、贈与にも贈与税がかかり、贈与税は相続税よりも高くなっています。
知識もなく贈与をおこなってしまうと、相続税以上の税金を取られてしまいます。
それでは意味がありません。
どんな方法で行えば節税できるのかをよく知っておくべきです。
ここでは、贈与による節税対策の中でも、簡単にできるものを紹介します。
1. 相続税対策の基本!贈与税の基礎控除を活用する
贈与税による節税対策にも色々とあります。
住宅取得資金控除、配偶者控除、教育資金贈与の利用など。
なんだか難しそうですね。
そこで、一番楽に簡単にできる対策が110万円の基礎控除を利用する方法です。
贈与税の基礎控除は年間110万円までと小額となっていますが、これを活用するだけでも大きな差が出ます。
1-1 @110万円の基礎控除を長期的に行う事がポイント
親がピンピンしているうちから相続対策をする家庭はそれほど多くありません。
実際に相続対策を考える時というのは、親がもうそれほど長くないと感じた時でしょう!
いざその時点から年間110万円という少額な贈与を行っても、それほど効果的な節税対策はできません。
ましてや、贈与を始めてから3年以内に親が亡くなってしまうと、その贈与は相続財産として計算されてしまい、相続税の対象となってしまいます。
110万円の基礎控除を利用する場合には、長期的な贈与を行う事がポイントになります。
1-2 A孫や子供の配偶者にも贈与して110万円の節税効果を上げる
相続人となる子供だけではなく、孫や子供の配偶者など、贈与する人を増やすことで節税効果は一層高くなります。
【例 Aさんの資産が3億の場合】
Aさんには妻がいましたが、既に死亡しており、相続人となる人は子供3人となります。
・@子供3人だけに10年間贈与した場合
年間110万×3人=330万円
10年間で3300万円
このうち、Aさんが死亡した日から遡って3年以内の相続人への贈与は相続財産となるので、実際には2310万円が生前贈与として認められます。
2億7690万円が相続財産と相続税の対象となりますが、相続税には基礎控除があります。
「基礎控除額:3000万+600万×法定相続人の数」
実際の課税資産額=3億ー(贈与による節税分2310万)-3000万-(600万×3人)=2億2890万円となります。
子供だけに110万円の贈与による節税対策を10年間した場合の節税額=7110万円
・A子供3人以外にも孫や子の配偶者7人に10年間贈与した場合
年間110万円×10人×10年間=1億1千万円
このうち、Aさんが死亡した日から遡って3年以内の相続人となる子供3人への贈与は相続財産となるので、実際には1億10万円が生前贈与として認められます。
更に、1億9990万円から基礎控除分を引きます。
1億9990万円−(基礎控除額3000万+600万×子供3人)=1億5190万円
子供以外にも10年間110万を贈与した場合の節税額=1億4810万円
@とAを比べてみましょう。
7700万円も差が開く結果となりました。
ポイントは2つ!
贈与税の控除額は年間110万円までの為、長期に行うことも大事ですが、1人よりも2人、3人よりも10人。
このように贈与する者を増やすことで節税効果は高くなります。
本来、相続開始前3年以内の贈与は相続財産として加算されるのが基本となりますが、相続人以外への贈与は加算されないのです。
2. 相続人とはならない孫への贈与は次の相続でも相続税を減らせる
孫への贈与は、次の相続の際の相続税も減らす効果を生み出します。
何も相続税対策をしないで相続した場合と比較してみましょう。
@A死亡によりAの子となるBが2億を相続
→2億から基礎控除を除いた分が課税対象
AB死亡によりBはAから引き継いだ2億を自分の子C(Aの孫)に相続
→2億から基礎控除を除いた分が課税対象
極端に言えば、Aの財産2億に対しては、相続で受け継がれる度に課税されることになります。
しかし、Aが孫3人に10年間110万円を贈与していたとしたら、A死亡によりAの子となるBは、孫に贈与した分3300万以外の1億6700円から基礎控除を除いた分が課税対象となります。
また、孫への贈与については、年間110万円以上を贈与した場合でも相続税の節税対策として有効です。
Aが子のBではなく孫のCに財産を贈与してしまえば、Aから Cへ資産が移動したことで贈与税がかかるものの、Aが死亡した際とBが死亡した際の相続税の問題が発生しないことになるからです。
なお、Aが贈与ではなく相続として孫Cや他人などへ遺贈をすることもあるでしょう。
しかし、相続人以外への遺贈の場合、相続税の金額に2割加算されることになりますので注意しましょう。
2-1 孫へ生前贈与をする場合には注意も必要!
孫へ生前贈与をする際には注意することがあります。
特にその孫が幼児など、贈与の事などサッパリ理解できないような歳の場合です。
単なる孫名義の口座への振込みという事だけでは贈与とは認められないので注意して下さい。
例えば、祖父母が孫の将来の為と孫名義の通帳を作り、印鑑も通帳も管理している形で財産を残すケースがよくあります。
この場合、祖父母の財産とされてしまい、いくら孫名義の通帳だとしても孫への贈与としては成立しません。
せっかく孫へと思い渡した財産も、相続税の対象となってしまいます。
孫に生前贈与をする場合には、孫または法定代理人(孫の親)と贈与契約書を結んでおきましょう。
孫名義の預金通帳も、孫が成人している場合には孫本人、未成年なら法定代理人(孫の親)が管理するようにして下さい!
ここまでしておけば、問題なく生前贈与と認められます。