他人名義の家が建っている土地を相続した場合の対処〜借地権の解約や賃料増額請求について

相続で譲り受けた土地を、他人が使用しているような場合は少なくありません。

  • 相続した土地に他人の家が建って住んでいる
  • 相続した土地を他人が田んぼや畑として利用している

もともとの所有者が他人に土地を貸して利用させていたケースです。

 

相続で自分が譲り受けたとしたらどうなるのでしょうか。

 

例えば、

 

「かえしてほしい」
「地代を値上げしたい」
「必要ないから買い取ってもらいたい」

 

などと思った場合、できるのか?

 

家
貸し借りには、賃貸借と使用貸借があります。

 

違いは土地を貸すことによって、金銭などの対価をもらうか否かの違い。

 

2020年4月1日に使用貸借について改正ありましたのでそれをまえてご説明していきます!!

 

参考:民法第597条

 

1. 相続した土地を無料で使用されている!建物所有者・土地の使用者に対する対処方法!

 

元の所有者(被相続人)が「地代をもらわず、タダで使用を許していた」というケースは田舎などでは多くあります。

 

その相手は、親戚、または今は付き合いのあまりない遠い親戚や縁故関係にある方がほとんどです。

 

おそらく、「気兼ねなく使ってください」といった気軽な感じで契約書などはなく、使用期間も定めていないでしょう。

 

このような状態を、期間の定めのない使用賃借といいます。

 

1-1 使用する時期も目的もない場合〜明け渡しを求めれば契約は終わる

 

特に何に使うという目的もなく、使う時期もきまっていない場合について、いつ終わるのかを説明します。

 

【例】 譲り受けた土地に、親戚の名義で家が建てられているが、現在誰も住んでおらず、今後も住む予定がないケース

 

このような場合、土地の所有者が明け渡しを求めた時点で、契約は終わります。

 

何かしらの目的のために使い、目的が遂げられたら返却する。

 

それが使用賃借なので、現在土地を利用していないのであれば、土地の所有者のタイミングで返還を求める事が出来るのです。

 

土地を譲り受けたことを、建物の名義人へ伝え、土地の明け渡しを申し出ることで契約は終了します。

1-2 使用の目的がある場合の終了時期

 

何らかの目的があって、無償で土地を使っている場合、契約の終了はどうなるのでしょうか。

 

目的が何なのかによって、返す時期はかわってきます。

 

借主が死亡した時に終わりとなるケース

 

民法599条は,「使用貸借は、借主の死亡によって、その効力を失う。」と定めている

 

貸している方と借りている方の個人的な関係で成り立っているのが使用貸借契約です。

 

【例】 元の所有者(被相続人)がAさんに土地を貸していたケース

 

Aさんが亡くなったら、その時点で契約は消滅します。

 

貸し借りをした当事者同士の関係で成り立つ契約ですので、その権利を子供が引き継ぐことはできません。

 

借りている人は土地を借りていた人(契約者)が亡くなった場合はその契約自体終了となってしまいますので、引き続き使用貸借で借りる場合は再契約が必要になります。

 

使用収益が終わったとき、使用収益をするのに足りる期間が経過した時に終わりとなるケース

 

何かを手に入れる為に一時的に、土地を使用している場合、必要なものが手に入れば目的は達成されたと考えられ、契約は終了します。

 

例えば、土地を借りて住居用の家を建てていたケース。

 

建物の登記をした日から30年以上経過していれば、目的は達成したとされるため、使用貸借は終了できます。

 

また、建物が老朽化してリフォームや解体などをするようであれば、同様に使用貸借の目的を終えたとして解約できます。

 

増改築についても、無断で増改築したような場合には解約が可能です。

 

使用貸借の終了に同意してもらえれば、自分で使用することも売却することも可能になります。

 

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2. 借地契約で有料で土地を貸している場合の対処方法

 

土地は借りて建物を自分で建てる場合、土地所有者と建物所有者の間でかわすのが借地契約です。

 

この借地契約には、2種類の契約があります。

普通借地契約 契約期間が最低30年間となる契約(30年より短い期間はNG、更新あり)
定期借地契約 契約期間が50年以上となる契約(更新はなし)

参考:定期借地権の解説〜国土交通省

 

それぞれ、解約できる条件が異なりますので、紹介します。

 

2-1 普通借地契約の場合の解約について

 

普通借地契約を終了させるには、最低30年の契約が終了した時で、特別な理由(正当事由)が必要となります。

 

また、実際には、30年が経過しても、特別な理由がない場合には更新を拒否することができません。

 

よって、半永久的に借地人は使用できることになります。

 

ただ、借地人が合意してくれれば解約ができます。

 

よって、地主としては、借地人に対して合意解約の交渉をして、借地人が合意すれば地主本人が土地を利用することが可能になります。

 

2-2 普通借地契約の場合の売却について

 

建物が建っていたとしても、土地を売ることは可能です。

 

しかし、売却価格は安くなってしまいます。

 

他人の建物が建っている土地を欲しいと思う方は少ないからです。

 

実際には、そのような土地を買う方を見つけるのも大変でしょう。

 

売却を考えるなら、建物の所有者に買ってもらうのが一番です。

 

2-3 定期借地契約の場合の解約について

 

そもそも定期借地契約は継続的な土地利用を目的としています。

 

期間が満了しない状態で地主側からの中途解約を認めてしまうと、建物所有者にとっては不利益となります。

 

そのため、定期借地契約の場合、借地人の同意がないと解約はできません。

 

なお、借地人からの中途解約は認められます。

 

2-4 定期借地契約の場合の売却について

定期借地権は、通常は50年の契約となります。

 

期間が満了すると、建物所有者は地主に土地を返還することになりますが、地主は建物(借地権)を買い取る必要があります。

 

3. 地代を値上げをしたい!値上げするタイミングはどうしたらいいのか

 

地主は、借地人の変わりに固定資産税や都市計画税などを支払うことになります。

 

支払う税金は、借地人からもらう地代から支払いますが、なんとなくで地代を決めていた場合もあるでしょう。

 

中には、もらっている地代では不足している場合もあるかもしれません。

 

そういう場合には、地代を見直して適正な請求をしましょう。

 

なお、住宅地の場合の適正な地代は「固定資産税・都市計画税の合計金額の3〜5倍」です。

 

 

3-1 地代の値上げをするタイミング

 

借地権を定めている借地借家法の11条1号で地代の見直しするタイミングが明記されています。

 

借地借家法11条1号
地代又は土地の借賃(以下この条及び次条において「地代等」という。)が、土地に対する@租税その他の公課の増減により、A土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又はB近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって地代等の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間地代等を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。

@土地の租税公課(固定資産税)などが増減したとき
A経済事情で土地の価格が上昇・低下したとき
B近隣の似た土地の地代と極端に異なるとき

@〜Bに該当すれば、地代を上げることは可能です。

 

ただ、地代の値上げ交渉については借地人との話し合いになります。

 

なぜ値上げするのかをきちんと説明して納得してもらうことが重要です。

 

借地人の理解を得られるように丁寧に交渉しましょう。

 

また、当人同士では話し合いが進められない場合や交渉決裂してしまった場合には、調停を利用して下さい。

 

ただ、調停でもこじれてしまった場合には、最終的に裁判になります。

 

当人同士の交渉の段階で簡単に合意が得られない場合には、弁護士を活用することをお勧めします。

 

裁判となれば、金銭的だけでなく精神的にも負担となります。

 

早い段階で相談したほうがいいでしょう。

 

 

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