親を長年介護した場合には相続分とは別に寄与分がもらえる可能性がある!寄与分を得るために知っておくこと!

相続では、寄与分という制度があります。

 

これは、故人の介護を自宅でおこなったことなどで、個人の財産が減るのを防いだ場合に認められるものです。

 

介護

 

また、故人の事業を無償で支えて財産の増加に貢献した場合、寄与分として法的相続分よりも多くもらえることになっています

 

ただ、介護した人全てに認められる制度ではありません。

 

介護は大変な負担を伴いますが、金銭では表しにくい貢献となります。

 

主張しても認めてもらえないばかりか、「親の介護は当たり前のことだ」と言われもめてしまうことも少なくありません。

 

介護の苦労を寄与分として認めてもらうにはどうすればよいのか?

 

長年介護を続けられた方に知っておいていただきたい制度ですが、認められるためには条件もあります。

 

ここでは、寄与分について説明していきます。

1. 寄与分が認められる費用や行動とは?相続人だけに認められる権利

 

民法は、なるべく平等に皆が納得できるようにいろんな状況を考慮して定められています。

 

その一つが寄与分です。

 

民法904条の2に定めてあり、親が亡くなる前にした親への資金援助。
参考:民法902条〜e-Gov民法検索

 

無償の労働などを寄与分として相続させる制度です。

 

相続は亡くなった方の資産をわけるものですから、故人を一生懸命にサポートしてきた行いが分配に反映されるのは、当たり前といえます。

 

例えば、母親が亡くなり、相続人は長女と次女の二人だけの場合。

 

通常、長女と次女は同じ子供という立場なので、遺産は2等分となります。

 

しかし、長女が母親の介護を20年間して、次女はその20年間協力せずに自由に暮らしていた場合。

 

長女は一人で20年間も介護をしてきたのに、次女と同じ相続分となるのは不公平に感じますね。

 

長女としては、20年間の介護を考慮して優遇してほしいと考えるのも当然です。

 

この長女の気持ちを可能にするのが、「寄与分(きよぶん)」という制度。

 

長女には寄与分が認められる可能性が高いです。

 

ただし、寄与分が認められるためには、条件に該当しなくてはいけません。

 

どのような行為なら寄与分として認められるのか?

 

1-1 寄与分として認められる行為とは?

 

民法902条に定められています。

 

被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について
特別の寄与をした者があるとき。
または、被相続人の財産(相続財産)の増加。
または減少を防いだという場合(一部省略して簡潔にしてあります)

 

まず、療養看護とありますが、どういうものなのでしょう?

 

いくつか具体的な例をあげて紹介していきます。

ケース(例) 寄与分なる・ならない
月・火・水と親の食事を作っていた ならない・子供として当たり前の範囲
入院や通院の費用を出していた なる
親と同居して施設に頼ることなく介護を続けた なる・可能性あり

 

・介護についての判例

<大阪家庭裁判所審判平成19年2月8日>
平成14年2月以降。
相手方Dは被相続人に相手方宅で3度の食事をとらせたり、外出時には付き添いをしたり、また排便の対応にも苦慮していた。

 

この被相続人に対する身上監護には相手方Dに特別の寄与があったと認められる。

参考:別冊判例タイムズ〜判例タイムズアーカイブス

 

同居して食事や下の世話、外出の付き添い等の介護行為が寄与分として認められています。

 

この裁判を申し立てた人たちも、相手方Dの介護は献身的であったと認めています。

 

最終的に相手方Dは、2002年2月からの3年間の介護について、1日当たりの金額を8000円と設定し、寄与分として876万円を受け取れることになりました。

 

今回、判断の基準となったポイントは?

  • 3度の食事の補助
  • 外出時の付き添い
  • 排便の対応

この3点が、当たり前の世話の範囲をこえた部分として評価されました。

 

このような場合でも、相続財産を減らすような行いがあれば、寄与分としては認められないことも覚えておいてください。

 

 

2. 寄与分を認めてもらうポイント!客観的に証明すること

 

自宅で介護

 

寝たきりの親と同居していたのだから、大変なのは誰でも知っているはずです

 

しかし、介護を実際にしていた場合、どのような日々かを想像するのは簡単ですが、したことが無い人にとって、具体的にどれだけの労力と費用を要するかを知ることはできません。

 

寄与分を認めてもらうには、どのような介護の日々だったのかが具体的にわかるものを用意しておくべきです。

 

【例】

介護がいつから始まり、どんなことをしていたのか

 

1日のうち、どのくらいの時間を介護に使っていたのか等を日記につづっておくとわかりやすいですね。

 

また、介護のために使った費用は、レシートや領収書をとっておくとすぐに計算できます。

 

診断書やカルテは、故人がどんな状況だったかの証明になりますし、介護認定証明書があれば、介護の必要があると一目瞭然です。

 

ヘルパーや介護施設利用をしていた場合には、連絡ノートも取っておきましょう

 

連絡ノートに様子が詳しく残っています。

 

介護の記録となりますので、証拠として提出してください。

 

【例】

急に病院へ連れていくために、仕事を休んだことがある場合には!

 

給料明細を残しておけば、欠勤のための減収がわかります。

 

そのためにも、欠勤日がわかるメモや手帳、給与明細も残しておきましょう

 

介護は日々の生活にとても負担がかかるものです。

 

それを知ってもらうためには、介護に関わるすべての記録を残しておきましょう。

 

なお、寄与分が認められるのは、相続人だけです

第三者や、相続人にならない(例えば長男の配偶者等)人は寄与分を主張できません。

 

3. 分割協議で話がつかないなら調停や審判で寄与分を主張する

 

介護の大変さを遺産分割協議の際に伝えても、分かってもらえず寄与分を認めてもらえない事も少なくありません。

 

そんな時は、遺産分割調停の申立をして、寄与分を主張する事ができます。

 

調停では、準備していた証拠が役に立ちます。

  • 1日に占める介護の時間、それをどのくらいの期間続けてきたのか
  • 消耗品の費用や施設利用の費用
  • 介護をするために生じた減収などなど

状況をよく知らない調停委員も加わるため、具体的な証拠はあるだけ出すようにしましょう。

 

反対に、なんの証拠もなく、寄与分を認めてもらうのは、非常に困難です。

 

調停では終わらず、審判へともちこされた場合、具体的な証拠があることが重要となってきます。

 

どんな些細なものでも良いので、証拠を集められるだけ揃えておきましょう。

 

 

3-1 現在介護されている方!証拠を残しておくことが重要です

 

疲れた人

介護の大変さを主張する為に、証明する証拠を残しておくことは、とても大切な事なのです。

 

毎日忙しく過ぎる介護の日々だと思いますが、面倒でも日記やそれまでの関係書類を残すようにしてください。

 

日記などは、証拠としてだけでなく、故人との思い出にもなります。

 

目まぐるしく過ぎる日々を振り返るためにも、介護の記録をつけましょう。

 

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