相続手続きをしなくてはいけないのに連絡がつかない相続人がいる!
住所も分からない。
生きているかさえも分からない。
相続人の中に連絡がつかない人がいる場合、遺産分割協議をすることができません。
凍結された故人の口座の取引を再開することもできません。
では、どのように対処したらよいか?
それぞれケースごとに対応を説明していきます。
1.住所も連絡先すらわからない相続人がいるケース〜戸籍の附表の取得
所在不明でも、住んでいる所を探す方法はあります。
連絡先が不明な人の現住所は戸籍の附票を取ればわかります。
戸籍の附票とは
今住んでいるところや、家族構成がわかる住民票に対して、戸籍の附票は本籍を登録した時からの住所や婚姻、生死の全てが記録されています。
戸籍の附表は登録している本籍地の役所でしか取れません。
ただ、郵送での対応もしてくれます。
まずは、戸籍の附票をとるために、今の本籍と筆頭者名を調べることからはじめましょう。
1-1 現在の本籍地が分からない場合
現在の本籍地が分からない場合、まず不明者の母親の戸籍謄本を取り寄せてください。
母親の戸籍を見れば、探したい相続人の情報がのっているはずです。
情報をもとに、本籍地をたどり、現在の本籍地を見つけて附票を取れば現住所がわかります。
2. 現在の住所地にも居住していない場合〜不在者の財産管理選任の申立
引っ越しをした場合、通常は役所に転出届けをだし、引っ越し先では転入届けをだします。
しかし、中にはこのような届け出をしていない人もいて、どこに住んでいるか分からなくなっている人もいます。
これは一番やっかいなケースです。
とにかく手がかりを知るために、最後に届けをしている地域へいき、移転先について聞き込みなどをして手がかりを探すしかありません。
ただ、それでも住んでいる場所がわからず、電話連絡さえとれない場合。
家庭裁判所にて、不在者の財産管理の選任の申し立てをしてください。
申立ができるのは、
- 相続人
- 不在者にお金を貸している人
- 妻など、夫が不在で困っている方
- 実際に迷惑を被っている者(検察官が行う場合もある)
申し立てが認められれば、不在者の財産管理をする方を裁判所が選任してくれて、専任者が財産管理をまかされます。
行方がわからず連絡のとれない相続人がいても、専任者が不明者の代わりとなってくれるため、遺産手続きがすすめられます。
3. 相続人が生きているかすらわからないケースの対処方法〜失踪手続き
相続人の中に、生きているかどうかさえわからない人がいる場合。
所在がわからなくなってから7年が過ぎていれば、普通失踪として家庭裁判所へ失踪宣告を申し立ててください。
3-3 失踪宣告とは?
申立をすると、家庭裁判所が申し立て内容の調査をおこないます。
問題なければ公示勧告されます。
公示勧告とは
家庭裁判所の掲示板や官報という日本の公告をおこなう機関紙に載せて公にします。
6カ月以上公示勧告され、6カ月以上が過ぎても見つからなければ、失踪していることが認められ、失踪宣告が確定します。
確定後、10日以内に失踪届を裁判所にだして受理されれば、行方不明ではなく死亡とされるのです。
失踪宣告の申し立てから死亡となるまでには、通常およそ1年ほどの期間がかかります。
不明者に子供がいた場合、失踪宣告が確定し死亡となっているので、その子供が代襲相続することになります。
代襲相続とは
遺産分割の開始の時より先に相続人が死亡、または、相続できない状況となった時に発生するもの。
つまり、死亡してしまい相続できない親の代わりにその子供が遺産の分配を受けることになります。
ただ、遺産分割の開始後に相続人が死亡した場合、または失踪宣告で死亡とされた相続人が相続放棄をしていた場合には、代襲相続はできません。
・失踪届が受理された後に生きていることがわかれば取り消しできる
失踪宣告をして見つからない場合には死亡とされ、相続手続きを進めることができますが、身内の人を亡くなったことにしてしまうのは、気が引けるかもしれません。
しかし、失踪届が受理されて死亡となった場合でも、その後、生きていることがわかれば取り消しすることが可能です。
生きていた場合については、相続はやり直しすることになります。
ただ、その時に残っている相続財産だけを返還し、やり直しです。
4. 震災等で行方不明の場合〜失踪宣告の申立
突然の震災や船舶事故など、本人の意志とは無関係に行方がわからなくなる悲しい出来事もあります。
実際に東日本大震災では行方不明になった方が数多くおられます。
このような、不慮の事故や本意ではなく行方がわからなくなった場合、危難失踪、または特別失踪として、失踪宣告の申立をすることになります。
4-4 特別失踪とは?普通失踪との違い
特別失踪は、普通失踪との違いは、亡くなったと認められるまでの期間が全体的に短い点です。
所在が分からなくなってから1年以上経つと申立が可能です。
公示勧告後、2カ月以上経てば失踪宣告は確定します。
普通失踪、特別失踪どちらの場合も、失踪届が受理されると、死亡したことが法的に認められるということにかわりはありません。
生存を願う気持ちから申立をしないという選択も可能です。
しかし、相続人である以上、行方がわからないままにしておくことで、他の相続人へ迷惑がかかる場合もあります。
難しい判断にはなりますが、他の人の意見などを聞いて考えていきましょう。
5. 住所や連絡先は分かるものの連絡が取れない・協力してくれない相続人がいるケース〜調停や審判で解決
遺産分割協議に前向きにとりくんでくれない相続人がいると、いつまでたっても相続手続きが終わりません。
相手は協議に協力する気がないので相続人同士で解決するのは困難です。
この場合、遺産分割調停の申し立てをして、調停で解決するしかありません。
申立する場合、話し合いがなぜ出来ないのか?という理由を書くことになります。
そこで、連絡に応じないことを証明するために、相手に連絡をする場合は内容証明郵便など記録の残るものでするべきです。
なお、自分に都合の良い主張ばかりしていると調停をしても話はまとまりません。
ポイントは、なるべく公平な分割案を出すことです。
調停が成立すれば、調停調書謄本を受け取り、調書をもとに遺産分割が行えます。
しかし、もともと連絡が取れないほど関係はこじれていますので、調停に出てこない可能性もあります。
協議すべき相手がいなければ、調停は不成立となり、その場合はそのまま審判へ移行します。
なお、話し合いで協議はまとまらないとはじめから思っているなら、いきなり審判からはじめることも可能です。
調停との違いは、話し合いではない点です。
最終的に、裁判官の判断によって審判は決定します。
そのため、申立内容は判断の要となるため、公平な分割が求められます。
また、審判が確定すると、遺産分割を進めることができます。
審判は、裁判での判決と同等の強制力があるものです。
相続人の誰かが協力しない場合でも、遺産分割の大前提である、相続人全員の合意が必要なくなるのです。