相続人の一人に財産を独り占めされた!
遺言で相続人の一人だけに遺産がわたってしまいそう!
このように、相続では相続人にとって思ってもいなかったことがおこることもあります。
民法上、相続では、亡くなった方(被相続人)の自由な思いや意思を尊重することが基本です。
亡くなった方が、相続人の一人だけに遺産を残すような遺言を書いていたとしても、それは有効です。
しかし、例外もあります。
必ずしも遺言通りに全財産がわたるとは限りません。
また、独り占めされたケースでも、阻止することは可能です。
ここでは、遺産を独り占めされた場合、されそうな場合の対処について説明します。
1. 遺産を独り占めされそう!遺産の公平な分配とは?
遺産を独り占めしようとしても、そう上手くは行かないのが相続です。
また、一人だけに残す内容の遺言があったとしても、例外はあります。
実際にどのようなケースなら独り占めされないのかを紹介します。
1-1 相続人の一人が遺産を独り占めしようとしている場合〜弁護士や調停を活用する
今の時代、長男が遺産を全て引き継ぐ、なんていう時代ではありません。
また、法的にもそのような決まりはありません。
では、実際に独り占めしようとしている長男がいる場合にはどうするべきなのか。
この場合は、遺産分割協議をしましょう。
複数の相続人がいる場合、遺産は公平に分割されるべきです。
そのための方法が遺産分割協議です。
遺産分割協議は、相続人の全員が話し合った内容に合意することが成立のルールです。
誰にどれだけ分配するかは、相続人同士の同意があれば自由に決められますが、長男一人の意見や行動は通用しません。
長男の暴走を阻止することができます。
しかし、長男の暴走を阻止することはできても、話し合いが進まず解決できません。
そこで、調停または弁護士を活用してください。
第三者となる弁護士を入れ、相続について説明してもらいましょう。
それでも解決が難しいような場合には、弁護士に相談しながら調停を検討していきましょう。
2. 親が長男だけに財産を残す遺言を残してしまった場合〜遺留分の主張で公平性を
一定の相続人には遺留分が認められます。
この遺留分は仮に長男に全財産を残すという内容の遺言があった場合でも、認められるものです。
独り占めされた場合も同様です。
遺留分について主張すれば、財産を分配してもらうことができます。
ただ、直接本人に「遺留分を渡せ」などと主張しても応じてくれないでしょう。
内容証明や調停、裁判で主張することになります。
個人での解決は難しくなると思いますので、弁護士に相談しながら対応を検討していきましょう。
3. 相続人の一人が遺産を多くもらえるケースはあるのか〜寄与分
法定相続人となる方の相続の権利は、基本的には平等に存在します。
しかし、相続人の一人が他の相続人より多くもらえるケースもあるのです。
3-1 長男が親の生活費や介護費を負担しているケース〜寄与分が認められる場合
長男が自分のお金を使って親の面倒を見ていたケースです。
相続の時には、負担したことを理由に遺産を他の相続人よりも多く貰う事を主張してくるでしょう。
この場合、寄与分という問題がでてきます。
・寄与分とは?相続人の行為に注目
長男が自分のお金を使って親の面倒を見ていたケースで紹介します。
- 長男からの手助けが必要だったのか?
- 無償だったのか?
- 特別の貢献と言えるのか?
- 継続的なものだったのか?
上記の項目などから、長男が行った親への行為や親の面倒をみる方法がどうであったのかがポイントになります。
これらが総合的に判断され、実際に必要な行為で適切な方法であった場合には、事情を考慮して、特別に寄与があったとして長男の寄与分を認め、長男の相続分を増やすことが認められます。
なお、寄与分を主張するには証拠が必要です。
証拠もないのに寄与分を主張してくる場合には、単に身勝手な主張をしているにすぎません。
法に基づいた解決をするべきです。
4. 親の財産を相続人となる誰かが管理していた場合の対処〜特別受益について
親が生前のうちから相続人となるものが財産を独り占めしようとするケースもあります。
その場合、特別受益にあたるかどうかがポイントになります。
それぞれ、具体的な例をもとに紹介します。
4-1 長男が親の貯金を引き出していたケース〜特別受益になるかどうか
一人の相続人が亡くなった方の財産を管理し、自由に引き出したりして使用しているケースがあります。
このような事は後から発覚するものですが、発覚後に問いただして認めてくれれば良いのですが、しらをきるケースも多くあります。
この場合、親がその引き出しについて同意していたかどうかが問題となります。
・親の同意なく、長男が独断で行っていた場合〜返還請求または損害賠償請求
不当利得返還請求または不法行為による損害賠償請求ができます。
返還された分は遺産に(相続財産)戻して、分配を行います。
・親が同意していた場合〜特別受益が認められる
親が同意していた場合、生前贈与となり、特別受益を受けたことになります。
この場合、贈与分を遺産(相続財産)に加算して分配されます。
なお、長男が認めない場合、当事者同士での解決は難しくなり、調停や訴訟が必要となるでしょう。
その場合には速やかに専門家に相談するべきです。
・親が家においておいた現金を長男が保管しているケース〜調査方法
預貯金などなら履歴を見れば入出金が確認できますが、現金は厄介です。
少しくらいの現金ならバレないだろう!という軽い気持ちなのか?
本来は相続財産とされる現金を隠される事があります。
これは他の相続人に対してもそうですが、税務署に対しても同様の行為を取る人がいらっしゃいます。
この場合、その現金が実際に資産に含まれるものなのかどうか?これが確実に分かる証拠が必要です。
それを調べるためには、口座のある銀行に明細書を出してもらうといいでしょう。
今は現金かもしれませんが、その現金は親の口座から引き出されている可能性は高いです。
また、税務署も現金までは把握できないだろう…と考えているのであれば大間違いです。
税務署の調査は甘くなく、目を光らせて調査は行われます。
現金だからと言ってバレないというのは、浅はかな考えです。
4-2 昔から長男だけが優遇され、よく援助を受けていたケース〜特別受益の可能性大
親の生前時において親から受けた利益は特別受益の問題がでてきます。
長男が亡くなった親から住居のための建築費用や賃貸料、高額な学費などを受け取っていた場合、特別受益となる可能性が高いです。
特別受益に当たれば、長男に支払われた分も相続資産に加算されて分配されることになります。
4-3 親の生命保険の受取人が全て長男になっている場合〜生命保険は相続財産になるのか
生命保険が相続で問題となるかどうかは、受取人が誰になっているかで決まります。
生命保険は相続財産となり、相続人に分配されます。
相続財産とはならず、分配はされません。
つまり、親の生命保険の受取人が全て長男となっていた場合には、長男の固有の財産とされるのが原則となります。
・例外がある〜著しく不公平になるか否かがポイント
- 支払われた保険金の額
- その保険金の遺産の総額に対する比率
- 受取人の被相続人に対する貢献度合い
などなど…
様々な事情を考慮して、長男への生命保険金の支払いが他の相続人との関係において著しく不公平である場合には例外となります。
すなわち、生命保険金も特別受益にあたるとされ、遺産分割されることになります。