交通事故の加害者になってしまった場合、加害者としていくつか負うべき責任ややるべきことがありますので、順番に見ていきましょう。
もちろん、怪我をしている場合には、加害者であろうと治療を最優先にするべきです。
自分で任意保険に加入していれば、サポートや補償を受けることができますので活用しましょう。
一言に加害者といっても
- 過失が10ある加害者
- 相手を死亡させたり重症の怪我を負わせてしまった加害者
- 過失が被害者にもある加害者
など、状況によってそれぞれ負う責任は異なってきます。
ここでは、刑事責任を問われるような加害者になってしまった場合について詳しく説明していきます。
1. 加害者が負う可能性がある3つの責任〜刑事・民事・行政責任
交通事故で加害者になると、「刑事上」「民事上」「行政上」の3つの責任が発生します
事故で他人を死傷させた場合は、刑法に定められた懲役刑・禁固刑・罰金刑に処されます。
【例】
被害者を死亡させたり、重症を負わせた場合には、自動車運転過失致死傷罪(刑法211条2項)、危険運転致死傷罪(刑法208条の2)などが適用されます。
被害者が軽症の場合は、ケースに応じて罰金、または刑事責任を負わずに済みます。
悪質ではない限り、有罪にはなることはないでしょう。
交通事故で他人を死傷させた場合には、自動車損害賠償保障法(自賠法)及び民法に基づき、下記のような責任を負う事になります。
・被害者への損害賠償責任⇒不法行為責任(民法709条)
・人身事故⇒無過失責任(自賠法3条)
また、加害車両の運転手本人の他に自動車の所有者など、法律上の一定の関係にある者も運行供用者責任や使用者責任などの責任を負います。
交通事故で、道路交通法違反があると、行政上の罰則をうけます。
【例】
- 前方不注意
- 信号無視
- スピード違反
- 無免許運転
- 飲酒運転など
このような道交法に違反している場合には、減点や反則金が課せられたり、公安委員会から免許停止や免許取消処分を受けることになります。
更に理解を深めていただくために、下記の図も参考にして下さい。
この3つの責任について、何となくイメージできたでしょうか?
1-1 事故現場での義務もある〜道路交通法による3つの義務
更に、道路交通法では、事故を起こした車の運転手や同乗者に対し、3つの義務を定めています。
- 負傷者の救護(119番通報や病院への搬送、応急措置)
- 危険防止の措置(第二第三の事故を防ぐ為に後続車を誘導するなど)但し、事故車両は警察到着まで動かさない。
- 110番通報(警察への届出)
警察への届出がないと、賠償の根拠となる被害を証明できなくなります。
なお、この1〜3については、加害者側だけの義務ではなく被害者側にも同様の義務が定められています。
また、事故処理後は保険会社への届出も忘れずに行ってください。
保険金の支払いに関して、任意保険は事故後60日以内など、一定の期間内での届出を必要としています。
期間内に届出をしなかった場合、保険金が支払われないこともあります。
加入している保険会社の規定を確認して、速やかに連絡しましょう。
参考ページ:保険会社との交渉マニュアル
2. 示談成立への道を探る!示談が刑事責任を軽くするポイントに
この3つの責任を御理解いただけたうえで更に説明すると、@刑事上の責任とA民事上の責任は密接に関係しています。
加害者が民事上の責任として被害者との間で示談できた場合(示談金を支払った)、加害者の刑事上の責任を決定する際、これは有利な情状として考慮されます。
【例】
重大な交通違反を伴わない単なる前方不注視による交通事故だった場合でかつ被害者の傷害の程度が加療1か月未満の場合
被害者と示談が成立していれば、原則として刑罰を科される可能性はほとんどありません。
つまり、上記のような軽微な交通事故であれば、検察官は示談成立(被害者が許す意思を表明)を前提として、その交通事故を起訴しない方向で最終処分をくだすことがよくあるのです。
これを起訴猶予(きそゆうよ)といいます。
起訴猶予になった=検察官が事故を起訴しなかったということです。
すると、あなたは懲役刑も罰金刑も受けない=いわゆる前科が付くこともない、ということになります。
【例外】
飲酒運転、信号無視又は無免許運転などの重大な交通違反があった場合や結果が重大な交通事故
この場合は、被害者と示談が成立したとしても、検察官は事故を起訴することになります。
よって、刑事裁判が開かれる場合があります。
そして、懲役刑、禁錮刑又は罰金刑のいずれかの処分を受けることになりますから、前科(交通前科)が付くことになります。
ただ、先ほども述べましたが、重大な交通違反や重大な事故結果として刑事裁判になってしまっても、示談が成立していれば加害者の刑事上の責任を決定する際には有利な情状として考慮されます。
ですから、加害者は事故発生後、検察官が起訴か不起訴かを判断する前までに示談できるかどうか!
これが一つのポイントになりますから、被害者と示談できるように努めましょう!