サラ金という言葉はどこへ
今から10年くらい前には、「サラ金地獄」などという言葉がはやりました。
高金利、過剰貸し付け、過酷な取り立てにより、自殺者まで発生し、マスコミで度々大きく取り上げられておりました。
しかし、ここ数年は、「サラ金」による大きな事件が、マスコミで報道されることは、めっきり少なくなりました。
なお、「サラ金」という言葉は、消費者金融業者を蔑視する呼称として、現在は「消費者金融」という言葉に置き換えられております。
その影響ももちろんあります。
しかし、消費者金融が原因の悲惨な事件が、連日のように報道されるということは、現在ではほとんどなくなっております。
消費者金融の問題が解決した原因
この背景には、様々な要因があります。
過酷な取り立ても、現在では貸金業法により禁止されています。
また、多重債務者を救済する様々な司法上の手続きの整備も進みました。
高金利の原因であるグレーゾーン金利が事実上違法化されたことにより、高金利での貸し付けが事実上不可能となったことが、最大の要因として考えられます。
そして、グレーゾーン金利を事実上違法化したのが、
また、 違法な金利による弁済額の取戻しの裁判を容易にしたのが、
以下で、この2つの判決について説明していきます。
グレーゾーン金利を否定した判決
グレーゾーン金利とは、利息制限法の制限利息を超えるが、出資法で規制する利息は超えない利率の利息のことです。
例えば、10万円未満の金銭の貸し付けの場合、利息法制限上の制限利息は年20%で、出資法上の制限利息は29.2%です。
この差である20%超29.2%以下の金利がグレーゾーン金利です。
29.2%という数字は、利息制限法上の上限利息に利息制限法で規定する。
債務不履行の場合、賠償金の計算する際上限割合1.46倍を乗じた額です。
ところで、貸金業者が利息制限法で定める上限利率を超える利率の利息を、借手に請求かつ受領すれば、違法であることは明白なような気もします。
借手に1回でも債務不履行があれば、制限利息の1.46倍までの遅延損害金の請求ができるという利息制限法上の規定。
これと、旧貸金業法43条に、法定の書面を備えたうえで、借手が貸金業者に対して、任意に、利息制限法を超える利息(及び損害金)を弁済した場合、その弁済を有効なものと見なすという規定があったからです。
通常の消費者金融では、借手が1回でも債務の弁済を怠ると、貸手が、残債務について一括して元本と利息の請求できる一括請求条項が付されています。
1回でも債務の不履行があると、残債務のすべてが期限の利益を喪失し、利息の支払義務が発生します。
また、債務不履行があるために、利息に遅延損害部分が加算され、通常は出資法の上限のギリギリの水準の金利が課されます。
普通の借手は、1回ぐらいは必ず債務の不履行を起こします。
そうすると、即座に、違法な高金利が合法化され、しかも、残債務について支払いの猶予がなくなり、利息の支払義務が生じるという、極めて借手に不利な条項です。
消費者金融業者は、この条項の適用により、借手が、利息及び遅延損害金として、任意に、利息制限法の上限利息を支払ってきたのだから、旧貸金業法第43条の規定により、その利息の受領は正当なものであると主張。
違法な高金利で利益を上げてきました。
この仕組みは、グレーゾーン金利問題が生じる核心と言ってよいものでしたが、H18.1.13の最高裁判決では、この一括請求条項による借り手の弁済は任意性を欠くと判断しました。
グレーゾーン金利による利息の受領は、ほとんどがこの一括請求条項の適用によるものです。
この一括請求条項の適用による利息の弁済が任意性を欠くとなると、貸金業者がグレーゾーン金利での利息を受領することが、正当化できなくなります。
この判決により、消費者金融業者が、利息制限法の上限金利で金銭を貸し付けることが大幅に制限されました。
貸金業者に取引履歴の開示を義務付けた判決
それまでは、違法金利による過払金請求訴訟において、被告である貸金業者が、過去の金銭の貸し借りの取引記録の開示を拒む。
それにより原告側が、重要な事実を立証できず、裁判で不利な立場に立たされることがしばしばありました。
しかし、この判決で、「過払いの場合であっても、貸金業者には取引履歴を開示する義務があり、この義務に違反した場合には、損害賠償責任を負う」
と判断しました。
さらに、これを受けて、金融庁も、貸金業者が取引履歴の開示を拒んだ場合には、行政処分の対象とすることにしました。
これらにより、過払金返還請求訴訟が、原告にとって、非常にやりやすくなりました。
このことも、消費者金融問題の解決に大きく貢献しました。